近年、子供が美容室を苦手とするケースが急増しています。とくに発達障害や感覚過敏などの特性を持つお子様にとって、美容室の環境は過度な刺激にあふれ、安心して施術を受けるには厳しい空間となっている場合が多く見受けられます。
そもそも美容室には、カット中のハサミの音、ドライヤーの風圧と音、周囲の話し声や鏡に映る人の動きなど、五感を刺激する要素が多く存在します。特性のない子供であってもこれらの刺激に圧倒されやすく、泣いたり、暴れたり、椅子に座っていられなかったりすることがあります。
とくに以下のような要因が、子供が美容室を苦手とする背景にあります。音や光への過敏反応(感覚過敏)、初対面の人との会話が難しい、見通しのない状況への不安、長時間じっとしていられない、嫌な記憶のフラッシュバック(前回泣いた経験など)といったことが原因になっています。
これらの反応は一時的な「わがまま」ではなく、子供の発達特性や心理状態に基づくものです。そのため、環境を変えたり、刺激を減らすことが解決の糸口になります。家庭での散髪も選択肢の一つですが、親がハサミを使うことに不安を感じる場合や、子供が動き回って危険を伴うケースも多く、結果的に「プロに頼みたいけれど、美容室には行けない」という悩みを抱える家庭が増えているのです。
年齢が低いほど美容室における抵抗感が強い傾向があります。幼児では約半数以上が美容室で泣いた経験を持ち、未就学児ではさらに高い割合となっています。また発達障害の傾向がある子供の場合は年齢にかかわらず感覚的な拒否が続くこともあるため、保護者が対応に悩む場面も多く報告されています。
とくに感覚過敏を抱える子供にとっては、美容室の環境そのものが負担になることがあります。ドライヤーの風や音、ハサミの金属音、明るい照明、ケープの締めつけ感、鏡に映る人の動きなど、一見何気ない要素が強い刺激となり、不快感や恐怖心を引き起こします。これらの要素は、本人にとって苦痛を伴うため、カット中に身動きが取れず不快な思いをし続けることで「美容室=怖い場所」と刷り込まれてしまいます。
待ち時間が長かったり、施術中に何度も姿勢を変えられたりすることで、じっと座っていられない子供はストレスを強く感じてしまう傾向にあります。そのため、カットどころか美容室へ連れて行くだけでも一苦労という声が、保護者の間で多く上がっています。
こうした背景から、外出しなくてもプロに来てもらえる訪問美容師のニーズが年々高まっているのです。特別支援学校に通う児童や医療的ケアが必要な子供を持つ家庭では、とくにこの傾向が顕著です。訪問美容では、自宅という慣れた空間で施術が受けられるため、安心感を得られやすく、子供の不安や拒否反応が大幅に軽減されます。保護者にとっても、移動やスケジューリングの手間が省ける点が大きな利点となっています。